「歯周病」ってなに??

「歯周病」ってなに??

最近、TVを観ても、雑誌を読んでも、さかんに「歯周病」という言葉が出てきます。中には“ポケット”なんていうのも出てきます。“ポケット”ってあの洋服に付いているあれのこと?と思わず返してしまう人もいるかもしれません。でも、今更人に訊くなんて恥ずかしいとか、「???」の連続の人もいるかもしれません。今では「歯槽膿漏」というのは、あまり聞かなくなった代わりに、「歯周病」というのがいやに増えてきました。感覚的にはどちらの言葉も同じように思えますが、これも質問をするとバカにされるようで、あやふやにしてしまったり。

「歯槽膿漏」というと、年寄りの病気で、何か歯が抜け落ちて、“総入れ歯”と関連付けてしまうから、自分はまだ若いのでそんなこととはあるはずもなく、無関係に決まっている、と思いがちです。実のところ、私の学生時代には「歯槽膿漏症」という科目はあったものの、「歯周病学」という学問はなかった(日本においては)のです。ですから、国家試験でも「歯槽膿漏学」で試験を受けてきたわけです。ではなぜ、「歯周病」を約40年前までの間、「歯槽膿漏症」と呼んでいたのでしょう。

さて、この文字をあらためて読んでみると、“歯の槽(おけ)から膿が漏れ出る”という意味になります。現実には、“膿”だけでなく“出血”もします。よく考えてみると、歯の槽(歯の植わっているところ)から、膿や血が漏れ出すというのは学問的なものではなく、その状況を説明しているにすぎないのです。“そんなことわかってらぁ~”なのですが、ここに“近代歯周病学が学問”として成立した理由があります。言いかえるなら、わからなかった“歯槽膿漏症”の原因が、40年前頃にわかったのです。全ての歯槽膿漏症が口腔内微生物によって起こされる感染症であると

口腔内微生物は、信じられない数が存在します。種類も300以上と言われ、1人の口の中にこれらが生活しています。虫歯と歯周病をおこす微生物は異なりますが、基本的には共に糖分を好むことが知られています。その中でも歯周病をおこす微生物は性格が悪いのです。陰険な歯周病菌は、空気の薄い所で増殖します(嫌気性菌)。歯の付け根のところにくっついた菌は、何ヶ月もかけてミルフィーユ状の層を作ります。初期に付いた微生物(菌)は、その上に色々な形の仲間が付くことによって、“空気の薄い場所”を獲得します。さぁ、口腔内微生物の天国がやってきました。彼らは一切の痛みも与えずに、皆さんの歯肉に炎症をおこし始めます。卑怯な彼らは有頂天になって、歯肉に炎症をおこします。結果、その下にある“あごの骨”を壊しにかかります。炎症がおこると、出血と排膿がおこります。次にくるのが骨の破壊です。ポケットが深くなって(洋服のではありません。骨が下がることによって、歯肉はそのままですから、その間に深い溝を形成することを言います。)またそこに微生物が層を成してくっつき、空気の嫌いな菌は更に深部に潜入します。立派な歯槽膿漏の完成です。

総入れ歯の人々は、こうして歯をあっという間に失ってしまったのです。(年齢に関係ありません。)昔からイメージがあった歯槽膿漏症=総入れ歯は、結果的には正しかったのです。ただ違うのは、現在の歯周病治療では、このようなリスクを完全とは言わないまでも、安定させ、歯を保存することが可能になりました。

さて“歯周病である”ことがわかったとします。皆さん方は唖然として、どうしたらよいのか、また、この先、どうやって生きていこうかなどと考えるのではないでしょうか。人によっては、暗く落ち込んでしまうかもしれません。でも、そんな心配はいりません。何故でしょうか?

口の中には口腔内微生物が数限りなくいることは、お話ししました。その微生物は、凶悪なものから、そこそこの悪さをするものまで色々です。一般的な歯周病は、そこそこの悪さをする微生物が作り出します。しかし、そこそこの悪さでも、1年に1mmも顎の骨を溶かす事は許されることではありません。なぜなら、積み重なれば、10年で10mm、20年で20mmの骨を溶かす事になるからです。“歯医者に行くのは怖い、何をされるかわからない、というのが皆さんの本心であることは、私は知っている!のです。”私からすると、残念ながら歯周病治療には、歯科医師はほとんど関わらないのが残念でなりません。(当然ですが、診査、診断はします)では、誰が歯周病の治療をするのでしょうか。「歯科衛生士」(勿論、国家資格者です)という人たちがやるわけです。当医院に在籍している彼女たちは、口腔内微生物をやっつける任務を負っています。バスターズは、勿論ブラッシング指導をし、プラークという微生物の塊を除去します。そして、歯周病の進行状態をチェックすることによって、病状の安定化を行います。歯周病という骨の溶ける病気は、残念ながら完治することはありません。しかし、進行を止めることはできます。ただし、重度の歯周病や、末期の歯周病の場合には、歯科衛生士だけでは現状維持は不可能になります。でも、重度の歯周病であっても、それなりの治療法がありますので、恐がらずに来院することをお勧めいたします。

歯周病治療の流れ

  1. 歯周病の原因を知らせる。
  2. 口腔微生物の恐ろしさを、本人に認識してもらう。
  3. 患者さんそれぞれに合わせたブラッシング指導を行う。テクニックを身に着けてもらう。
  4. 自宅での毎日のブラッシングによって、微生物の除去をしてもらう。
  5. 自身のブラッシングで取り残しが出来る部位を、専門の歯科衛生士さんにとってもらう。
  6. 3ヶ月間、歯周病菌の活躍を阻止する治療をする。
  7. 通常3ヶ月間ごとのチェックにより、現状を維持する。

どうでしょう。この流れだと、何も怖くはないと思います。これからの時代は、歯を抜いたり、削ったりする時代ではありません。常に口腔内の環境を整えることが大切な時代です。(ただし、手遅れの場合は、この限りではありません。)

当院では、専門の歯科衛生士が常勤で在籍しており、専用の部屋にて治療を行い、日々、皆様方の口の中の健康を維持することを目指しています。

では、心配な皆さんの為に、もう一度まとめてみましょう。

① 色々な方向から一本一本の歯を調べる

出血があるか、膿が出ているか、腫れているか、骨がどの位溶けているかを調べます。口の中全体のX線を撮ります。

② どういう種類の歯周病が、どの程度進行しているかをみます。

これによって治療の内容が変わってきます。(※重度の歯周病は、全体の8%程度ですので、ほとんどの方は通常の歯周病です。)

③ 患者さん自らがこの病を治すのですから、歯周病のことを理解してもらわないといけません。(これを動機付けと言います。)

この国の方々は、理解力が高いのでほとんど理解されますが、歯周病を治そうという意識のない方々は、この時点で治療の失敗を覚悟しなければなりません。

④ スケーリングとプラークコントロールとルートプレーニング

スケーリングは歯肉の上の歯石をとること、プラークコントロールは微生物の塊(プラーク)をいかに取るかのテクニック、ルートプレーニングは歯肉の下にあるプラークをとることです。

⑤ すぐにプラークがつかないように、入念に歯の表面を磨きます。

どうでしょうか。現在では歯科医院というところは、地獄から天国への移動を行っているところなのです。

①~⑤をを3ヶ月ごとに繰り返すことによって、歯周病菌は活躍の場を失うことになります。

しかし、稀にこういう治療をしても、炎症がとれないこともあります。そうなると、3ヶ月単位の来院が、1ヶ月ごとに変わることになります。それでもダメな場合は、歯周病の手術ということになります。手術というと、何か大変なことに思われますが、難しい歯を抜くよりも簡単な手術なので、心配いりません。どうやっても歯が抜けてしまった場合、あるいは治る見込みのないところには、最終手段としてインプラント治療をすることもありますが、この分野においても、当院は40年近くの経験をもっていますので、安心して下さい。

とにもかくにも、歯が無くならないようにするための歯周病治療であるということを、忘れないようにしていただきたいと思います。